単純承認と限定承認

今回はメリットやデメリット、手続きなどの観点から、単純承認と限定承認の違いを解説します。

1 単純承認とは
2 限定承認とは
3 単純承認と限定承認の違い
4 まとめ

単純承認とは

どのマイナスの遺産も引き継ぎます。単純承認とは、被相続人がのこしたすべての遺産を相続することです。相続では、不動産や株式などのプラスの遺産のみならず、消費者金融からの借入な

単純承認では、資産や負債の金額とは無関係に、すべての資産を例外なく引き継ぐ行為です。

単純承認のメリットとは

相続放棄や限定承認とは違い、何も手続きが必要ない点が最大のメリットです。相続人になったことを知ってから3ヶ月経てば、自動的に単純承認を選んだこととなります。

単純承認のデメリットとは

マイナスの遺産まで相続してしまう点です。たとえば資産よりも負債の方がおおいと、相続した資産で負債を返済しきれません。相続が完了してからも、借金の返済を続ける必要が出ます。

したがって、負債の方がおおい場合には限定承認や相続放棄を選択するのがベストです。

単純承認に関する注意点

民法の第921条の規定により、下記の行為をおこなった場合には3ヶ月を経過する前に単純承認を選んだとみなされます。

相続財産の一部またはすべてを処分(売却など)
相続財産の一部もしくはすべてを隠す

本来資産よりも負債がおおい場合は、単純承認を選ぶべきではありません。しかし上記の行為をおこなうと、意に反して単純承認を選んだとみなされて、多大な損失を被るので注意です。

限定承認とは

限定承認とは、相続する資産の範囲内で、借金などの弁済義務を負う相続方法です。単純承認の場合、被相続人が遺した借金などは全額相続人が返済する義務を負います。

一方で限定承認を選べば、相続する資産の金額分だけ借金を返済すれば良いので、相続後に多額の借金を負わずに済みます。

限定承認のメリットとは

仮に被相続人が多額の負債を遺しても、ご自身が相続する資産の金額分だけ返済すれば済む点が限定承認のメリットです。例えば資産を500万円相続した場合は、借金の返済は500万円までとなります。

なお相続放棄をおこなえば借金を一切返済せずに済むものの、プラスの資産も手元にのこせません。生まれ育った家など、相続したい資産がある場合は限定承認が適しています。

限定承認のデメリットとは

限定承認には2つのデメリットがあります。1つ目は、相続人全員の同意が必要となる点です。1人でも反対した場合は限定承認をおこなえません。

2つ目は、手続きが単純承認と比べて非常におおい点です。家庭裁判所への申し立てや清算(債権者への弁済)が必須となる上に、準確定申告という手続きが必要となるケースもあります。

限定承認では手続きが必要

前述したように、限定承認を実施するには手続きが必要です。

1つ目の手続きは家庭裁判所への申し立てです。相続放棄した人を除く相続人全員で、被相続人が最後に住民票を置いていた土地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行いましょう。

2つ目は清算手続きです。限定承認をした旨と債権の請求をおこなうべき旨を、官報にて公告し、その後に現金化した遺産を用いて債権者に借金を返済します。返済後に資産が残った場合には、相続人の間で資産を分け合うことが可能です。

上記2つの必須手続きに加えて、準確定申告が必要となるケースもあります。値上がりする資産(株式など)を相続すると、売却しなくても含み益に所得税が課されます。所得税が課税された場合には、準確定申告の手続きを忘れずにおこないましょう。