数次相続の場合の、不動産の相続による名義変更登記

数次相続とは

数次相続とは、被相続人の遺産相続が開始された後に、遺産分割協議や相続登記が未了の状態で相続人の１人が死亡した時に起こることです。

例えば、死亡した夫の相続中に妻が死亡した場合、死亡した妻の財産を子が相続しなければなりません。

この際、子供が相続する財産の中には、本来は妻が夫から相続すべきであった財産も含まれているはずです。

つまり、子供が母親の財産を相続する時には、夫→妻→子供という２回分の相続が含まれていることになります。

このように、相続手続の中に２回以上の相続が含まれていることを数次相続と言います。

数次相続が発生すると、死亡した相続人の法定相続人が相続人として新たに登場するため、数次相続が発生しなければ相続人になることがなかった人が相続人になり、手続きが非常に複雑になります。

数次相続ではどのような人が相続人になるのか理解しておきましょう。

代襲相続との違い

代襲相続とは、相続人になる予定だった人がすでに死亡していた場合、死亡した相続人に子がいた場合に限って、その子供が死亡した相続人の代わりに法定相続人になるというものです。

代襲相続の場合には、被相続人よりも先に相続人が死亡している必要があります。

一方、数次相続は被相続人が死亡した後で遺産分割協議や相続登記未了のタイミングで相続人が死亡した場合に発生します。

相続人が被相続人の死亡前に亡くなっていたら代襲相続、被相続人死亡後に亡くなったら数次相続と理解しておきましょう。

また、代襲相続では死亡した相続人の配偶者は相続人にはなりませんが、数次相続では死亡した相続人の配偶者が相続人になります。

ここが代襲相続と数次相続の最も大きな違いと言えるでしょう。

数次相続による法定相続分

数次相続によってどのような人が法定相続人になり、法定相続分はどのようになるのか詳しく解説していきます。

法定相続人と法定相続分

まずは、法定相続人と法定相続分について解説していきます。

被相続人の夫や妻などの配偶者は常に法定相続人となりますが、その他の法定相続人は第１順位から第３順位まで存在し、以下のようになっています。

第1順位：子供や孫などの直系卑属

第2順位：親や祖父母などの直系尊属

第３順位：兄弟姉妹

そして、配偶者と法定相続人の法定相続分の割合は以下のようになります。

	配偶者の法定相続分	配偶者以外の法定相続人の相続分
第1順位	２分の１	２分の１
第２順位	３分の２	３分の１
第３順位	４分の３	４分の１

夫の相続手続き中に妻が死亡した場合

夫の相続手続き中に妻が死亡した場合には、第一順位の法定相続人である子供は妻（母親）の相続もしなければならないので数次相続が発生します。

この場合には、子供が全額父親と母親の財産を相続することになります。

最もシンプルな数次相続ですが、このようなケースは稀で実際には、もっと複雑になります。

父親の相続手続中に子供が死亡した場合

父親の相続手続き中に子供が死亡した場合はどうなるでしょう？

まず、父親の妻である母親が２分の1の財産を相続します。

次に、死亡した子供の妻が死亡した子供の取り分であった財産の２分の１を相続し、残りを死亡した子供の子供（孫）が相続することになります。

死亡した子供に兄弟がいなかった場合、数次相続によって父親の財産は以下のように配分されることになります。

• 父親の妻：２分の1
• 死亡した子供の妻：４分の１
• 死亡した子供の子供（孫）：４分の1

この場合には数次相続によって、本来相続権のなかった死亡した子供の妻が相続権を得ることになります。

このように数次相続は思わぬ人が相続人となり複雑になるので自分で手続きを行うことが非常に難しい相続です。

まとめ

数次相続が発生すると、死亡した相続人の法定相続人が相続人として登場するので手続きは非常に煩雑になります。

また、相続登記を放置すると、放置している期間に相続人の誰かが死亡し、また数次登記が発生するなどして、法定相続人の数がどんどん増えていき手続きは放置すればするほど複雑になります。

相続登記に期限はありませんが、放置することによって数次相続発生のリスクが高くなるので、早めに司法書士などの専門家に依頼して相続登記は済ませておきましょう。