相続した不動産売却に掛かる諸費用

遺産相続で取得した不動産を売却する際には、大きく「相続登記の諸費用」、「不動産業者の仲介手数料」、「不動産売却時の税金」という計3種類の費用がかかります。この記事では、各費用について詳しく解説します。

相続登記で発生する諸費用

不動産を売却するには、遺産相続により取得した不動産をご自身の名義に変更する必要があります。名義変更(相続登記)では、下記2つの費用がかかります。

登録免許税

登録免許税とは、家や土地などの不動産について、自身に所有権があることを対外的に証明するためにかかる税金です。

相続登記の場合、登録免許税は下記の計算式で算出した金額となります。ただし100円未満の金額は切り捨てします。

• 登録免許税 = 課税価額 × 0.4%

課税価額とは、固定資産評価証明書に記載された不動産の金額です。ただし、1,000円未満の金額は切り捨てします。

たとえば課税価額が3,500万円の場合、登録免許税は下記の通り計算されます。

• 登録免許税 = 3,500万円 × 0.4% = 140,000円

書類の準備費用

相続登記を行うには、被相続人及び相続人の存在や正当性を証明する目的で、いくつか書類を準備する必要があります。具体的に必要な書類はケースによって異なるものの、主に下記の書類が必要です。

• 戸籍謄本(被相続人・相続人)：1通450円
• 住民票の除票(被相続人)：1通300円
• 印鑑証明書：1通300円
• 固定資産評価証明書：1通約300円(自治体によって異なる)

相続人の人数などによって必要な部数は変わりますが、最低でも1,000円前後の費用がかかります。

不動産業者の仲介手数料

不動産業者に買い手探しを依頼する場合、仲介手数料の支払いが必要です。具体的な金額は業者によって異なるものの、法律によって下記の通り上限が定められています。

売却金額	手数料率
200万円以下の金額	売却金額の5%
200万円超〜400万円以下の金額	売却金額の4%
400万円超の金額	売却金額の3%

上記の料率が上限となるので、基本的にはこの相場を基準におおよその費用を見積もりましょう。たとえば売却金額が2,000万円の場合、仲介手数料は下記の通り計算できます。

• 仲介手数料 = 200万円 × 5% + 200万円 × 4% + 1,600万円 × 3% = 66万円

上記の金額に消費税を加えることで、実際に支払う費用を算出できます。

不動産の売却にかかる税金

不動産を売却すると、「譲渡所得税・住民税」と「印紙税」が費用としてかかります。

譲渡所得税・住民税

遺産相続で取得した家や土地を売却すると、「譲渡所得」に所得税と住民税が課税されます。譲渡所得とは、売却金額から「取得費(不動産の取得にかかった費用)」と「譲渡費用(売却にかかった費用)」を差し引くことで求まります。

• 譲渡所得 = 売却金額 − 取得費 − 譲渡費用

譲渡所得に課税される所得税と住民税の税率は、不動産の保有期間が5年間を超えているかどうかで異なります。

保有期間が5年間を超えている場合、所得税率(復興特別所得税を含む)は15.315%、住民税率は5%となります。一方で保有期間が5年以下の場合、所得税率(復興特別所得税を含む)は30.63%、住民税率は9%が適用されます。

たとえば保有期間が40年、譲渡所得が8,000万円の場合、所得税と住民税はそれぞれ以下の通り計算できます。

• 所得税 = 8,000万円 × 15.315% = 1,225万2,000円
• 住民税 = 8,000万円 × 5% = 400万円

つまりこのケースでは、不動産売却によりおよそ1,600万円の費用(税金)がかかったわけです。

印紙税

不動産の売買時に締結する「売買契約書」には、印紙税という税金もかかります。印紙税は契約書に添付する方法で納税する税金であり、売却金額により課税額は以下のように異なります。

売却金額	印紙税の金額
記載無し	2百円
百万円超〜5百万円以下	2千円
500万円超〜1千万円以下	1万円
1千万円超〜5千万円以下	2万円
5千万円超〜1億円以下	6万円
1億円超〜5億円以下	10万円
5億円超〜10億円以下	20万円
10億円超〜50億円以下	40万円
50億円超	60万円

たとえば遺産相続で取得した不動産を3,200万円で売却した場合、印紙税として2万円の費用がかかります。

まとめ

今回お伝えしたように、遺産相続で取得した土地や家を売却すると、多額の費用がかかります。しかし節税対策を適切に行えば、不動産売却にかかる費用を減らせる可能性があります。少しでも手元に多くの現金を残したい方は、専門家である税理士に相談しましょう。