相続税申告を自分でやるメリットとデメリット
税理士に依頼する方が大半ではあるものの、相続税申告は自分で行うこともできます。今回は相続税申告を自分でやるメリットとデメリットを解説します。
目次
相続税申告を自分でやるメリット
相続税申告を自分でやるメリットは、税理士に報酬を支払わずに済むことに尽きます。
税理士に相続税申告の業務を依頼した場合、一般的には相続財産総額の0.5%から1%程度の報酬がかかります。たとえば3億円の相続財産がある場合は、150万円から300万円もの金額を税理士に支払わなくてはいけません。
一方で相続税申告をご自身で行えば、当然税理士への支払いは発生しません。数十万円から数百万円もの出費を抑えることができるため、せっかく引き継いだ財産を減らさずに済みます。
相続税申告を自分でやるデメリット
税理士に報酬を支払わずに済むものの、実は相続税申告を自分でやるとあらゆる面でデメリットが生じ得ます。具体的には、下記4つのデメリットに注意が必要です。
相続税申告に必要な書類作成に多大な手間がかかる
相続税申告を行うには、全部で15種類(付表を除く)ある相続税申告書を作成する必要があります。書類ごとに相続税や税額控除の計算を行うため、一つ一つインターネットや書籍で調べる必要があり非常に面倒です。
また、申告書とは別に戸籍謄本や固定資産税の評価に関する証明書など、膨大な数の添付書類を用意する必要もあります。
税務の専門的な知識を要することや普段ほとんど行わない作業であるため、なおさら相続税申告の手続きには多大な労力と時間がかかります。相続税申告は10ヶ月以内に終わらせる必要があるため、間に合わせようと思うとプライベートや仕事が犠牲になる可能性もあります。
正しい金額で相続税申告をできない可能性がある
相続税を計算するには、あらゆる税法や通達、各種特例などをすべて理解する必要があります。また株式や不動産などの価額算定には複数の方法があるため、状況に応じて方法を選択する判断力も必要です。
このように、相続税の計算は非常に複雑なので、税金のプロである税理士でも一筋縄では行きません。そんな難解な相続税の計算をご自身で行うとなると、正しい金額で相続税申告を行えない可能性が高いです。
実際よりも少ない税額で申告したり一部の相続財産を記載し忘れると、後述する税務調査の対象となり、延滞税や過少申告加算税などのペナルティを科されてしまいます。これらの税率は10〜40%と高いため、最初から税理士に相談するよりも支出が多くなる場合もあるので注意です。
税務調査の対象となるリスクが高い
相続税申告を行った方の5人に1人は、正しく申告できているか確認する目的で「税務調査」を受けます。一度税務調査を受けると、およそ8割ほどは不正申告や過少申告などが認定され、加算税などのペナルティを科されます。
税理士に頼らず自分で相続税申告を行うと、この税務調査の対象となるリスクが大幅に上がります。単純に素人が作ると、相続税申告書にミスが出やすいことが理由として挙げられます。また、税理士が作成していないことで、税務調査によりアラを探しやすいという側面もあります。
相続税を無駄に多く支払う可能性がある
「余計な特例や節税対策は使わずに、確実に税務調査を受けない税額で申告すれば良いだろう」と思う方もいるでしょう。ですがそうすると、今度は無駄に相続税を多く払うデメリットが生じます。
下手に安全策を追い求めると、税理士に頼む場合と比べて、税額が数百万円以上多くなってしまいます。多大な労力を費やしたにも関わらず、税理士に依頼する場合よりも支出が多くなることになりかねません。
まとめ
税理士への報酬がなくなる点で、一見すると自分で相続税申告を行う方がメリットが大きいと感じるかもしれません。しかし自分で相続税申告を行うと、後から加算税などが科されたり、余分に多く納税することで、かえって支出が多くなります。
最終的なメリットの大きさで考えると、税理士に相続税申告を依頼する方がオススメです。