相続税申告期限までに申告しないリスク
相続税申告の期限は、原則相続開始から10ヶ月以内です。今回の記事では、相続税申告の期限までに申告しなかった場合、どのようなリスクがあるのかを解説します。
無申告加算税や重加算税などが課税されるリスクがある
期限内に申告しない最大のリスクは、本来よりも多額の税金を支払うことです。相続税申告の期限までに申告を済ませないと、「無申告加算税」、「延滞税」、「重加算税」のいずれかの税金が課税されます。
無申告加算税
無申告加算税とは、正当な理由なく期限内に相続税申告を行わない場合に課される税金です。
無申告加算税は、本来納付する相続税額に、5%〜20%の税率をかけることで計算します。
- 無申告加算税 = 相続税額 × 5〜20%
具体的な税率は状況に応じて、下記の通り変わります。
- 税務調査の事前通知が来る前にみずから相続税申告を行う場合:5%
- 税務調査の事前通知〜税務調査日の間に相続税申告を行う場合:10%(納付税額が50万円を超える部分については15%)
- 税務調査を受けてから相続税申告を行う場合:15% (納付税額が50万円を超える部分については20%)
たとえば相続税額が100万円、税務調査の事前通知が来る前に相続税申告を行った場合は、100万円×5%=5万円の無申告加算税が課されます。
延滞税
延滞税とは、期限内に相続税を納税できなかった際に課税される税金です。相続税申告期限に間に合わないと必然的に納税も間に合わないため、延滞税も課税されることになります。
延滞税は、本来支払う予定であった相続税額に、一定の税率を乗じることで計算します。いつ相続税を納税するかによって、延滞税の税率は異なります。
⑴納付期限から2ヶ月以内
納付期限がすぎてから2ヶ月以内に相続税を納税できれば、延滞税の税率は年2.6%となります。ただしこの税率は令和2年12月31日までの規定であり、その後は変わる可能性があります。
⑵納付期限から2ヶ月を超えた期間
納付期限から2ヶ月を超えると、延滞税の税率は年8.9%と高くなります。ただしこちらも、令和3年以降は変わる可能性があります。
重加算税
重加算税とは、相続税を払わない・少なくする目的で、財産を隠していたり、偽装した場合に課される税金です。
財産を隠した上で相続税申告を行わない場合、重加算税が課税されます。悪質度が高いことから、税率は35%〜50%と非常に高いです。
相続税申告を行ったものの財産を隠していた場合は35%、相続税申告を行わない上に財産を隠していた場合は40%となります。そして、過去5年の間に重加算税や無申告加算税が課された経験があると、重加算税の税率は50%まで上がります。
たとえば相続税を払いたくないことを理由に、財産を隠ぺいした上で、本来申告すべき2億円の相続税を申告しなかったとしましょう。この場合は40%の税率が適用されるため、2億円×40% = 8,000万円もの税金が追加でかかります。
相続税を減額できるあらゆる特例を活用できない
相続税申告期限までに申告しないリスクは、ペナルティ(税金)を課されるだけではありません。本来ならば相続税を減額できる特例を活用できなくなるリスクもあります。
たとえば、「農地等を相続した際の納税猶予の特例」や「事業承継税制」では、期限内に相続税申告を行うことが原則的な条件となっています。そのため、相続税申告期限までに申告しないと、こうした特例を使った減税は行えません。また、被相続人が住んでいた住居について、大幅に相続税を減税できる「小規模宅地等の特例」に関しても、相続税申告期限までに申告しないと、活用できないリスクがあります。
特例が活用できないと、場合によっては数百万円〜数千万円も税額が変わることもあるので注意しましょう。
まとめ
今回お伝えした通り、相続税申告期限に間に合わないリスクは非常に大きいです。少しでも支出面での負担を減らすためにも、相続税申告は期限内に行いましょう。
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