認知症の相続人がいる場合の遺産相続手続き
目次
認知症の相続人がいる場合には代理人が必要
相続人の中に認知症の方がいる場合には、自分の権利を正当に行使することができないと判断されてしまいます。
そのため、認知症の方がいる場合には、そのまま遺産相続手続きを進めることができません。
具体的には認知の程度に応じて以下のいずれかの代理人を選定する必要があります。
- 成年後見人
- 保佐人
- 補助人
それぞれの代理人がどの程度の認知症のレベルで選定されるのか、また代理人に与えられる権利について詳しく解説していきます。
成年後見人
成年後見人が選任されるのは、判断能力が全くない方です。
例えば、日常の買い物が1人でできないなど、日常生活の中での判断能力がない方に対して成年後見人は選任されます。
申立てができるのは、本人、配偶者、四親等以内の親族、検察官、市町村長などで、後見人には財産管理の代理権、取消権が与えられます。
保佐人
保佐人が選任されるのは、判断能力が著しく不十分な方です。
日常の買い物くらいはできるけど、不動産の売買などの重要な法律行為を行う場合には誰かの支援があった方がよい方です。
保佐人の本人、配偶者、四親等以内の親族、検察官、市町村長などで、借金、相続の承認、家の新築や増改築など特定の事項についての同意権、取消権で、それに加えて申立てによって借金、相続の承認、家の新築や増改築など特定の事項以外の事項についての同意権、取消権、特定の法律行為についての代理権が与えられることがあります。
補助人
補助人が選任されるのは判断能力が不十分な方です。
日常生活における買い物などは普通にでき、不動産の購入なども1人で行うことは可能であるものの、適正に行うことができない恐れがあり誰かの助けが必要な方に対して補助人は選任されます。
申立てができるのは、本人、配偶者、四親等以内の親族、検察官、市町村長などで、無条件に与えられる権限はありません。
ただし、申立てによって、借金、相続の承認、家の新築や増改築など特定の事項の一部についての同意権、取消権、特定の法律行為についての代理権が与えられます。
代理人選定までの流れ
認知症の方が相続人の中にいる場合には代理人を選定しなければ遺産相続手続きを進めることができません。
そして、代理人は自分たちで勝手に選定することができるものではなく、裁判所の審理を得て、裁判所に決定してもらう必要があります。
この手続きがあるので、相続人の中に認知症の方がいると手続きがなかなか進みません。
代理人の選定は以下のプロセスで行われます。
- 家庭裁判所へ選任申立て
- 家庭裁判所が審理を行う
- 家庭裁判所による後見開始の決定
家庭裁判所へ選任申立て
まずは家庭裁判所へ代理人選任の申し立てを行います。
代理人は自分たちで勝手に選任することはできません。
家庭裁判所へ選任してもらう必要があるということをまず理解しておきましょう。
したがって、相続人の中に認知症の人がいる場合には遺産分割協議をすぐに始めることはできません。
家庭裁判所が審理を行う
代理選任の申し立てを行うと、家庭裁判所が審理を行います。
特に問題がなければ審理にかかる時間は2〜3週間程度になります。
家庭裁判所による後見開始の決定
審理が終了すると、家庭裁判所から後見開始の決定が出て、代理人が遺産分割協議に参加することができるようになります。
相続人と代理人で遺産分割協議を行う
代理人に対して後見開始の許可が下りたら、ようやく遺産分割協議を始めることができます、
通常の遺産分割協議は被相続人の死亡後にすぐに始めることができますが、相続人の中に認知症の方がいる場合には遺産分割協議に入るのが遅くなってしまいます。
まとめ
相続人の中に認知症の方がいる場合には、単独で法律行為を行うことができません。
遺産分割協議の前に裁判所に代理人を選任してもらう必要があります。
代理人の選任が選任されない限りは遺産分割協議を進めることができません。
相続人の中に認知症の方がいるという時点で、遺産相続手続きは複雑になるので、早めに司法書士など専門家へ相談した方がよいでしょう。