遺産分割協議が無効になり得るケース
目次
遺産分割協議に相続人でない者が参加していたケース
遺産分割協議の相続人でない者が参加していたケースでは遺産分割協議が無効になる可能性があります。
遺産分割協議は相続人だけが参加することができるものなので、相続人ではない者が参加していた場合は無効です。
相続人ではない者が参加することなどあるの?と思う人も多いでしょう。
しかし、戸籍が誤っており、相続人でもない人が相続人になっていたようなケースではこのような事態が考えられます。
事前に「参加すべき人は誰なのか」ということを明確にした上で遺産分割協議をスタートさせるようにしてください。
遺産分割協議に相続人全員が参加していなかったケース
逆に遺産分割協議に相続人全員が参加していなかったケースも無効になってしまいます。
遺産分割協議は相続人全員が参加し、相続人全員の合意が必要です。
それにも関わらず、相続人全員が参加していない場合には無効になります。
このケースでは、代襲相続によって相続人がイレギュラーに増えたに起こり得ることです。
例えば「法廷相続人は生存している兄弟だけ」だと思い込んで遺産分割協議を進めた場合、兄弟の中にすでに死亡していた相続人がいれば、その子供に代襲相続が発生し、相続人が増えることになります。
このような状況で相続人全員が揃っていない遺産分割協議は無効になります。
やはり、遺産分割協議の前には「法定相続人は誰なのか」ということを明確にした上で手続きを進める必要があります。
不安な人はあらかじめ司法書士などの専門家に相談しておいた方がよいでしょう。
遺産分割協議の際の意思表示に錯誤があった場合
最も多い無効の理由と言われるのが「錯誤」です。
例えば、被相続人が遺言を残していたことを知らずに遺産分割協議に応じたものの、後から遺言の存在に気づき、「遺言の存在を知っていれば遺産分割協議には応じなかった」というようなケースでは錯誤に当たります。
このようなケースでは民法第95条に基づいて錯誤による無効を主張できる可能性があります。
遺産分割協議の際の詐欺や脅迫があった場合
遺産分割協議に同意した際に詐欺や脅迫があった場合も遺産分割協議は無効になります。
例えば、共同相続人から「財産はこれしかないから印鑑を押せ」と虚偽の説明に納得して同意したり、内容をよく確認しないまま遺産分割協議に同意してしまったようなケースは詐欺に当たる可能性があります。
または「同意しないと、殺すぞ」などと脅迫されるケースもあります。
このようなケースでは、民法第96条に基づき、詐欺や脅迫による取消の意思表示を行い、遺産分割協議無効確認の訴えを提起することが可能です。
民法上で法律行為の無効と判断されるケース
民法上で法律行為が無効と判断される事由がある場合にも遺産分割協議は無効になる可能性があります。
前述した詐欺・脅迫や錯誤なども法律行為の無効事由に該当しますが、それ以外の無効事由があった場合にも遺産分割協議は無効です。
例えば以下のような事例では法律行為の無効事由となり得ます。
- 相続人に意思能力がない者がいる
- 協議内容が公序良俗に違反する
- 相続人が未成年者で法定代理人が存在しない
このような場合には、法律行為が無効と判断されるので、遺産分割協議も無効となる可能性があります。
まとめ
遺産分割協議は相続人全員が参加し、全員が納得しなければ有効に成立しません。
そのため、相続人以外の者が参加した場合や、相続人の一部が参加していない場合は無効ですし、法律行為の無効事由があった場合にも無効になります。
特に、相続人が全員参加し、相続人以外の人は参加できないという部分に関しては、戸籍をしっかりと調べた上で、法律を熟知している人でないと「誰が相続人で誰が相続人ではない」ということが分かりにくいのも事実です。
そのため、法定相続人が誰か分からない場合には司法書士などの専門家に依頼した方がよいでしょう。