遺産分割協議はやり直せるか
目次
遺産分割協議のやり直しができる2つのケース
遺産分割協議書は相続人全員が同意し、実印を押印する書類ですので、「やり直すことができない」と考えている人が多いのではないでしょうか?
確かに遺産分割協議書は効力の強い書類ですが、遺産分割協議はやり直すことができないわけではありません。
以下の2つの状況下では遺産分割協議をやり直すことが可能です。
- 遺産分割協議が無効である場合
- 相続人全員がやり直しに同意している場合
遺産分割協議をやり直すことができる2つのケースについて詳しく解説していきます。
遺産分割協議が無効である場合
そもそも以前行った遺産分割協議が無効である場合には、遺産分割協議をやり直すことになります。
以下3つのケースでは遺産分割協議が無効になります。
- 相続人の一部が欠けていたり、相続人以外の人が協議に参加した遺産分割
- 遺産分割が詐欺や脅迫によって行われた場合
- 遺産分割の後に新たな財産が発見された場合
このようなケースでは遺産分割協議が無効なります。
遺産分割協議は、大前提として、相続人全員と被相続人の全ての財産の分割について話し合い、相続人全員が同意のもとで行われるものです。
上記いずれかの事象に該当してしまうと、法的に有効な遺産分割協議とは判断されずに無効となってしまうことがあります。
このような場合には、遺産分割協議がやり直しになります。
相続人全員がやり直しに同意している場合
法的には遺産分割協議が有効に成立していても、相続人全員がやり直しに同意している場合には遺産分割協議をやり直すことができます。
例えば、「親と同居することを前提に実家を相続した相続人が、仕事の事情によって親との同居ができなくなったので、同居が可能な別の相続人へ変更したい」などの相続人全員が同意できる事情があるのであれば、遺産分割協議のやり直しは可能です。
相続人の一部がやり直しを主張しても、遺産分割協議をやり直すことはできませんが、相続人全員の合意があるのであれば、遺産分割協議をやり直すことは可能です。
遺産分割協議のやり直しの注意点
遺産分割協議をやり直す際には以下の2点に注意しましょう。
- 相続人全員が同意してもやり直せない場合がある
- やり直しによって新たに税金の支払いが発生する可能性がある
裁判所を通じて調停や審判によって遺産分割をした場合はやり直し不可
当初の遺産相続の際には家庭裁判所の調停や審判によって遺産分割を行なっていた場合にはやり直しをすることはできません。
このケースでは、家庭裁判所の調停や審判によってすでに有効に遺産分割協議が成立しているため、相続人全員が遺産分割協議に参加していなかったなどのよほど特別な事情がない限りは遺産分割協議をやり直すことは不可能です。
やり直すことによって贈与税・所得税が発生する可能性
遺産分割協議のやり直しは可能です。
しかし、やり直すことによって贈与税や所得税が発生する可能性があるという点には十分に注意する必要があります。
最初の遺産分割の際にすでに相続税を払っていたとしても、税法にはやり直しという概念がないため、遺産分割協議をやり直して、再び財産の名義が変わった際に、贈与税や所得税などの新たな税金が発生してしまう可能性があります。
遺産分割協議をやり直す際にはこの点に注意を払う必要があります。
さらに、やり直しを行う相続の中に不動産がある場合には登記がやり直しになります。
この際には不動産取得税と登録免許税が必ずかかってしまうので、仮に所得税や贈与税が発生しないとしても、やり直しによって余計なコストがかかってしまうことは間違いありません。
遺産分割協議のやり直しによってどの程度の税金がかかるのかについては、税理士などに早めに相談した方がよいでしょう。
まとめ
遺産分割協議のやり直しは、遺産分割協議が有効に成立していた場合でも相続人全員の同意があれば可能です。
ただし、最初の遺産分割協議を家庭裁判所の審判や調停によって行なっていた場合にはやり直しができないので注意しましょう。
また、遺産分割協議のやり直しによって所得税や贈与税が追加で発生することもあります。
この点については司法書士や税理士などの専門家と相談の上で手続きを進めるようにしてください。