相続税の支払い|連帯納付義務に注意。
元来相続人は、ご自身の相続税だけを支払えば事足ります。しかし、すべての相続人は連帯納付義務をおうため、他の相続人分の相続税を支払う必要が出てくるおそれもあります。今回は、そんな連帯納付義務をくわしく説明します。
目次
注意すべき連帯納付義務
連帯納付義務の意味
連帯納付義務とは、相続税の総額を相続人全員で連帯して納税する義務です。簡単に言うと、ある相続人が納税できないときに、他の相続人が代わりに納税する必要が出てくるのが、連帯納付義務です。
たとえば相続税総額が2,000万円、2人の相続人がそれぞれ50%ずつ納税するとしましょう。このとき片方の相続人が何かしらの理由で納税できなくなると、もう片方の相続人が2,000万円を納税する義務をおうおそれが出てきます。
連帯納付義務者の範囲
相続税法第34条により、「同じ被相続人から相続もしくは遺贈により財産を取得した全ての者」が連帯納付義務をおうこととなっています。
したがって、法定相続人に限らず、遺言で遺産を相続した第三者も連帯納付義務を負います。
連帯納付義務で負担する相続税の上限と期限
どのくらいまで負担する必要があるのか?
連帯納付義務で負担する相続税の上限は、ご自身が受け継いだ財産の価額までとなります。言い換えると、受け継いだ財産価額を上回る部分に関しては、ご自身の貯金などを崩してまで負担する必要はないのです。
たとえば相続人Aが5,000万円の財産を取得し、500万円の相続税を支払ったとしましょう。このとき相続人Bが6,000万円分の相続税を支払えなくなったら、Bが払えなくなった6,000万円の相続税のうち、Aは5,000万円−500万円=4,500万円だけを負担することになります。
いつまで連帯納付義務をおうのか?
連帯納付義務は、相続税申告の期限日から原則5年の間背おうことになります。つまり相続税申告から5年間を経過すれば、連帯納付義務により他の相続人の未納分を支払わずに済むのです。
ただし、5年以内に連帯納付の通知や督促を受けてしまうと、5年を経過してもその税金を支払う義務が生じます。
連帯納付義務による負担はどのように発生するか?
連帯納付義務により他の相続人が負担をおうケース
基本的には本来支払うべき相続人に催促が行われるため、連帯納付義務による負担が必ずしも発生するとは限りません。しかし、下記のケースに該当すると、連帯納付義務による負担が発生するおそれがあります。
- 自分以外の相続人が財産を受け継いだ後に失踪し、税務署がその相続人と連絡を取れなくなる
- 自分以外の相続人が納税する前に財産を使い果たしてしまい、税務署が相続税の支払いが不可能であると判断する
つまり、相続人から徴税を行えないと税務署が判断したら、他の相続人に連帯納付義務による負担が発生するのです。
連帯納付義務で思わぬ負担を背おわないためには
連帯納付義務からは逃れることができないため、相続人全員がしっかりと期限内に納税するように注意するしかありません。
たとえば遺産分割の時点で、現金を十分に持っていない相続人に対しては、現金化しにくい不動産などではなく現預金を相続させると良いでしょう。また、代表の相続人がすべての相続人から納税資金を預かった上で、まとめて納税するのもオススメです。
諸事情で上記の対策が行えないならば、定期的に相続税を支払ったかを他の相続人に確認するしかありません。いずれにせよ、各相続人が連携して完納すれば、余分な納税負担をこうむる心配はありません。
まとめ
すべての相続人は連帯納付義務をおうため、他の相続人が納税しなければ、ご自身の納税負担額が増えるおそれがあります。そうした事態にならないためにも、相続税を支払う前に未納を防ぐ対策を最大限講じることが大切です。