相続税の計算方法
今回の記事では、相続税の計算方法を流れに沿ってわかりやすく解説します。
目次
ステップ①：正味の遺産額を計算
はじめに、下記の手順で正味の遺産額を計算します。
- 相続する遺産の総額と相続時精算課税の適用を受ける財産を足し合わせる
- 足し合わせた金額から非課税財産や葬式費用、債務を差し引いて、遺産額を算出
- 遺産額に相続開始前から3年以内に贈与を受けた財産を足し合わせる
非課税財産には、仏壇や仏具、国や地方公共団体に寄付した財産などが該当します。また、生命保険金や死亡保険金に関しても、「500万円×法定相続人の数」で計算した金額を非課税財産として差し引きます。差し引いて残った金額は「みなし相続財産」として、相続税の計算に含めます。
正味の遺産額を計算式で表すと下記になります。
- 正味の遺産額 = 遺産総額 + 相続時精算課税を受ける財産 − 非課税財産等 + 3年以内の贈与財産
ステップ②：課税遺産総額を計算
次に、正味の遺産額から基礎控除を差し引くことで、課税遺産総額を計算します。課税遺産総額を計算するさいの基礎控除は、以下の式で計算します。
- 基礎控除 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
基礎控除を計算したら、課税遺産総額を下記の式で計算します。
- 課税遺産総額 = 正味の遺産額 − 基礎控除
課税遺産総額が0円またはマイナスの場合は、相続税は課税されません。言い換えると、基礎控除の金額が正味の遺産額を上回っていれば、相続税は課税されずに済むわけです。
ステップ③：相続税の総額を計算
相続税を計算するさいは、まず各相続人が課税遺産総額を法定相続分に沿って相続すると想定して、相続税の総額を計算します。具体的には、各相続人の課税遺産を計算し、それをもとに各相続人の相続税を計算・足し合わせます。
各相続人の課税遺産を計算する
法定相続分に関しては、相続人の組み合わせによって割合が決められています。主要な法定相続分のケースは下記となります。
| 相続人の組み合わせ | 法定相続分 |
| 配偶者と子供 | 配偶者1/2、子供1/2 |
| 配偶者と被相続人の直系尊属(親や祖父母など) | 配偶者2/3、直系尊属1/3 |
| 配偶者と被相続人の兄弟姉妹 | 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4 |
| 子供のみ | 全財産を相続 |
下記の計算例を使って、各相続人の課税遺産を計算してみましょう。
- 法定相続人：配偶者、子供2人(長男、次男)
- 課税遺産総額：1億円
配偶者に関しては1/2、子供は半分にした課税遺産をさらに2人で分け合うため、1人あたり1/4となります。各相続人の課税遺産は以下になります。
- 配偶者：2億円 × 1/2 = 1億円
- 長男：2億円 × 1/4 = 5,000万円
- 次男：2億円 × 1/4 = 5,000万円
各相続人の相続税を計算し、それを足し合わせる
各相続人の課税遺産を計算したら、その金額をベースに相続税を算出します。相続税の計算では、下記の相続税率の表を参考にします。
| 課税遺産の金額 | 相続税率 | 控除額 |
| 1千万円以下 | 10% | 0円 |
| 3千万円以下 | 15% | 50万円 |
| 5千万円以下 | 20% | 2百万円 |
| 1億円以下 | 30% | 7百万円 |
| 2億円以下 | 40% | 1千7百万円 |
| 3億円以下 | 45% | 2千7百万円 |
| 6億円以下 | 50% | 4千2百万円 |
| 6億円超 | 55% | 7千2百万円 |
先ほどの例を使うと、各相続人の税率は下記になります。
- 配偶者：1億円 × 30% − 700万円 = 2,100万円
- 長男：5,000万円 × 20% − 200万円 = 800万円
- 次男：5,000万円 × 20% − 200万円 = 800万円
上記で計算した各相続人の相続税を足し合わせることで、相続税の総額を求めます。
- 相続税の総額 = 2,100万円 + 800万円 + 800万円 = 3,700万円
参考：相続税の税率 国税庁
ステップ④：実際の取得割合に応じて各相続人の相続税を計算
さいごに、相続税の総額を各相続人が実際に相続する遺産の割合で分け合うことで、各相続人の納税額を求めます。
たとえば、下記の割合で各相続人が遺産を取得する場合を想定してみましょう。
- 配偶者：70%
- 長男：20%
- 次男：10%
この場合、それぞれの相続人が納税する相続税は下記の通りです。
- 配偶者：3,700万円 × 70% = 2,590万円
- 長男：3,700万円 × 20% = 740万円
- 次男：3,700万円 × 10% = 370万円
まとめ
今回解説したとおり、相続税の計算方法は非常に複雑です。ご自身でも計算できなくはないものの、抜けや漏れが生じる可能性があります。正確かつスピーディーに相続税を計算したいならば、専門家である税理士に相談しましょう。
