自社株式の相続税評価方法
今回は、4つの相続税評価方法について、使用場面と算出方法を解説します。
目次
純資産価額方式
純資産価額方式とは、資産から負債を差し引いた金額「純資産」を基に、自社株式の相続税評価を行う方法です。
純資産価額方式を使うケース
財産評価基本通達における小会社が用います。小会社とは、従業員が70人未満の事業者のうち、下記すべての要件に該当する事業者です。
業種 | 総資産価額と従業員数 | 間近の期末より前から1年間の取引金額 |
卸売業 | 7千万円未満または従業員数5人以下 | 2億円未満 |
小売・サービス業 | 4千万円未満または従業員数5人以下 | 6千万円未満 |
その他 | 5千万円未満または従業員数5人以下 | 8千万円未満 |
純資産価額方式の算出方法
はじめに、資産と負債を時価に換算した上で時価純資産を求めます。次に時価純資産から含み益にかかる法人税等を差し引きます。最後に法人税等を差し引いた時価純資産を発行済株式総数で割ることで、1株あたりの相続税評価額を算出します。
式で表すと下記になります。
- 1株あたり相続税評価額 = (時価純資産 − 含み益にかかる法人税等) ÷ 発行済株式総数
類似業種比準方式
類似業種比準方式とは、自社と似ている業種の他社を参考に自社株式の相続税評価を行う方法です。
類似業種比準方式を使うケース
類似業種比準方式は、大会社が使う相続税評価方法です。大会社とは、従業員が70人以上の事業者のうち、下記いずれかの要件に該当する事業者です。
業種 | 総資産価額と従業員数 | 間近の期末より前から1年間の取引金額 |
卸売業 | 20億円以上(従業員数が35人以下の事業者は除く) | 30億円以上 |
小売・サービス業 | 15億円以上(従業員数が35人以下の事業者は除く) | 20億円以上 |
その他 | 15億円以上(従業員数が35人以下の事業者は除く) | 15億円以上 |
類似業種比準方式の算出方法
この方法で自社株式の相続税評価を行う際には、下記の式を用います。
- 1株あたり相続税評価額 = 類似業種の株価 × {(A + B + C) ÷ 3} × 0.7
A:自社の1株あたり配当金額 ÷ 類似事業者の1株あたり配当金額
B:自社の1株あたり利益額 ÷ 類似事業者の1株あたり利益額
C:自社の1株あたりの純資産価額(簿価) ÷ 類似事業者の1株あたり純資産価額(簿価)
なお類似業種比準方式は、例外的に中会社と小会社が使うことも可能です。使う際は、中会社は0.7ではなく0.6、小会社は0.5を掛けます。
併用方式
併用方式とは、純資産価額方式と類似業種比準方式を併用して、自社株式の相続税評価を行う方法です。
併用方式を使うケース
併用方式は、中会社が使う相続税評価方法です。中会社とは、従業員が70人未満の事業者のうち、下記いずれかの要件に該当する事業者(ただし大会社に該当するケースは除く)です。
業種 | 総資産価額と従業員数 | 間近の期末より前から1年間の取引金額 |
卸売業 | 7千万円以上(従業員数が5人以下の事業者は除く) | 2億円以上30億円未満 |
小売・サービス業 | 4千万円以上(従業員数が5人以下の事業者は除く) | 6千万円以上20億円未満 |
その他 | 5千万円以上(従業員数が5人以下の事業者は除く) | 8千万円以上15億円未満 |
併用方式の算出方法
併用方式では、類似業種比準方式で算出した価額と、純資産価額方式で算出した価額を、それぞれ一定の割合で足し合わせます。中会社を「大・中・小」の3つの区分に分けた上で、下記の式で相続税評価額を算出します。
- 1株あたり相続税評価額 = 類似業種比準価額 × α +1株あたりの純資産価額 ×(1 – α)
αには、区分ごとに下記の値を入れます。
- 大:0.9
- 中:0.75
- 小:0.6
参考:「取引相場のない株式」の評価方法を教えて下さい。 – 中小企業庁
配当還元方式
配当還元方式とは、1年間の配当金の額を基準に、自社株式の相続税評価を行う方法です。
配当還元方式を使うケース
配当還元方式は、少数株主グループが相続税評価を行うケースで使う方法です。たとえば、親族以外の従業員が自社株式を引き継ぐ際に、配当還元方式を用います。
配当還元方式の算出方法
この方法を使って自社株式を評価する際は、下記の式を用います。
- 1株あたり相続税評価額 = (1株あたり配当金額 ÷ 10%) × (1株あたり資本金額 ÷ 50円)
なお配当を行っていないケースでは、1株あたり配当金額を2円50銭として算出します。
まとめ
今回お伝えした方法を使って、自社株式の相続税評価を行っていただければ幸いです。