自筆証書遺言書の検認手続きと相続登記の流れ
亡くなった方が書いた遺言書が見つかった場合、相続登記を行う前に検認手続きが必要となります。今回の記事では、自筆証書遺言書の検認手続きや相続登記の流れを分かりやすく解説します。
目次
自筆証書遺言書の検認手続き
自筆証書遺言書とは、全ての文章を被相続人が自筆で書く遺言書です。遺言には「公正証書遺言」、「自筆証書遺言」、「秘密証書遺言」の三種類があります。
被相続人が遺した遺言書が自筆証書遺言または秘密証書遺言の場合には、検認手続きを実施する必要があります。検認とは、裁判所に遺言書が確かに存在する旨を確認してもらう手続きです。この章では、検認手続きの流れと必要となる書類をご紹介します。
検認手続きの流れ
はじめに、家庭裁判所に対して遺言書検認の申し立てを行います。申し立てを行う家庭裁判所は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。申し立ての際に提出する書類に不備がない限り、およそ1ヶ月後に家庭裁判所から相続人全員の住所に、遺言書を検認する日付に関してのご案内が郵送されます。
来たる検認日には、自筆証書遺言書を家庭裁判所に持参して検認を実施します。具体的には、日付や署名、押印、記載内容を確認します。なお検認の手続きに際しては、申立人のみが出席すれば問題ありません。検認手続きが完了したら検認済証明書と一緒に遺言書が返還されるため、それを用いてその後の相続手続きを実施する流れとなります。
検認手続きで必要となる書類
自筆証書遺言書の検認では、遺言書検認申立書に加えて、「遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍」と「法定相続人全員の戸籍」、「遺言者の子供に関する出生時から死亡時までのすべての戸籍(死亡している場合)」が必要です。
ただし、相続人が不存在の場合や遺言者の配偶者のみの場合などでは、遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍等、追加で書類が必要となります。
参考:遺言書の検認 裁判所
自筆証書遺言書がある場合の相続登記の流れ
次に、自筆証書遺言書がある場合の相続登記の流れをお伝えします。
相続人の確定
はじめに、自筆証書遺言書の内容や被相続人の戸籍等を基に相続人を確定します。基本的には自筆証書遺言書の内容にしたがって相続の手続きを行います。しかし、本来は法定相続人として遺産を相続できるにも関わらず、分け前がすごく少なかったり、全くもらえない相続人が出てくる可能性があります。
被相続人の子供や配偶者、父母・祖父母は、遺言書の内容に関係なく、一定割合の財産を相続できる権利(遺留分を受け取る権利)を持っています。したがって、自筆証書遺言書の内容を確認する際には、遺留分の権利を持つ相続人が、最低限の財産を相続できるかについても確認する必要があります。
検認手続きを済ませて、検認済証明書をもらう
相続人が確定したら、前述した検認手続きを実施します。相続登記を行うには検認済証明書が付いた自筆証書遺言書が必須ですので、大切に保管しましょう。
相続登記に必要な書類を揃える
次に、相続登記に必要な書類を揃えます。相続登記で必要となる主な書類は下記になります。
- 相続登記申請書
- 検認済証明書が付いた自筆証書遺言書
- 被相続人が死亡した旨が記載された戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票 (または戸籍の附票)
- 不動産を相続する相続人の戸籍謄本
- 不動産を相続する相続人の住民票(または戸籍の附票)
- 相続する不動産の登記事項証明書
- 相続する不動産の固定資産評価証明書
なお相続登記申請書は、下記法務局のホームページより様式をダウンロードできます。自筆証書遺言書を用いる場合は、「19) 所有権移転登記申請書(相続・自筆証書遺言)」の様式を活用します。
管轄の法務局に登記申請を行う
最後に、準備した書類を持って、不動産の所在地を管轄する法務局に登記申請を行えば完了です。
まとめ
自筆証書遺言書がある場合には、検認手続きを忘れずに実施しましょう。検認手続きを行って検認済証明書が付いた遺言書を受け取れば、それを用いて相続登記を実施できます。
ただし一定範囲内の相続人には「遺留分」の権限もあるため、検認の手続きに加えて、遺言書に書かれた内容の妥当性についても検討することが重要です。